山口大学工学部循環環境工学科

研究内容 【PDFでのダウンロードはこちらから】

物質の流動や変形を取り扱う学問:レオロジー工学~流体の質感を制御する~

貝出 絢

   わずか数%の添加剤によって液体が固体へと変化するのはなぜか? という疑問が学問的な興味の始まりでした。身近なところでは、ゼリーやプリンがあり、工業界においても似たようなものがあります。私が大学4年生の頃に目にした‘シリカゾル’という物質は流動性のある液体ですが、この中には数nm(10-9 m)オーダーのシリカ粒子が含まれています。この粒子が凝集構造を形成し、それらがさらに数珠つなぎになって、ネットワーク構造をつくります。これが周囲の水を包括することで固体(ゲル)へと変化します。ゾルのpHを変えると見た目の全く異なるゲルが得られます(写真1を参照)。化学式が同じでも、外観が変わるって不思議です。この現象を明らかにするために、いろんな測定・解析手法によってゲルとは? という命題に取り組んでいます。

産業界でのレオロジー工学~研究が身近な商品で活かされている~

貝出 絢

   私たちが普段扱うものは、液体、固体、そんな風にはっきりと分けられないカテゴリーのものがたくさんあり、これらを‘複雑流体’と呼びます。例えば、「ウイダーインゼリー」、「おくすり飲めたね」もゼリー状ですが流体に分類されます。一方、自動販売機で見かけるカルピスのなかにはミクロな粒子が含まれていて、それらの沈降を抑えるために増粘多糖類といわれる添加剤が使われています。
   私の所属する研究室では、化粧品にとろみをつけて塗り心地を改善したり、その添加剤を自動車業界で使用されるMR流体(磁気粘性流体)に応用し、粒子の沈降を抑制したりしています。レオロジー工学は、人の五感(センサー)を学問的に取り扱いながら、産業界にも寄与することができます。人類の発展のため、とまではいきませんが、快適な暮らしを提供するうえで助っ人のような役割を果たすことのできる面白い学問であると日々感じています。

研究者の紹介
氏 名(フリガナ) 貝出 絢(カイデ アヤ)
所 属 大学院創成科学研究科
学 位 博士(工学)
研究室ホームページ 佐伯・貝出研究室
研究キーワード レオロジー、複雑流体、分散系
貝出 絢
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